次世代の営業スタイルはコーチング営業(高いエフィカシー)
私が20数年前、新卒でIT企業の営業職になったとき、上司はお酒が大好きで、しょっちゅう夜は接待、週末は接待ゴルフで、酒焼け、ゴルフ焼けした色黒の体育会系部長だったことが思い出されます。気合根性と義理人情でお客さんと関係をつくっていく、そして、期末になったら無理やりにでも売り物を買ってもらう、それが社会人1年生のときに私が見ていた営業マン像でした。そのやり方を私も真似してみようと一生懸命になった日が懐かしく思い出されます。そこから数年たった後、営業と言えば「ソリューション営業」という時代になりました。お客さんの課題を深堀りして、それを解決するために頭を使って営業しましょう、というやり方です。コンサル営業のような言われ方もしました。うまく課題が聞けるようになると、気合根性、押し売り営業よりもはるかに売れるようになります。
マインドの使い方で説明すると、自分の売りたいものを売るというマインドでお客さんと対面すると、自分の売りたいものを売るための情報しか営業マンの脳には入ってきません。これはRASの原理です。RASは重要なものとそうでない情報をふるいにかけるフィルター機能です。売りたいだけの営業マンのRASを通り抜けるのは売るための情報のみです。営業マンが売りたいものをすぐにお客さんが買いたいと思っているわけではありませんので、このスタイルだと営業マンは苦戦します。客先に言ってもいまいち話が盛り上がらない、お客さんからすると、忙しいので、またにしてください、と言いたくなる。営業マンも営業の面白味をあまり感じない、自分が頼られているとも思えない。でも義務感で営業ノルマを追いかけている。
一方、ソリューション営業となると少し事情が違います。営業マンのゴールはお客さんの課題を解決することです。ですから、営業マンのRASを通り抜けるのはお客さんの課題周辺の情報です。お客さんの課題がある程度見えれば、自社の商品、サービスも提案しやすくなります。ですので、ソリューション営業はきちんとできれば成果もでます。ただ、十分に成果が出ていないことも多々あります。どうしたらいいのかをマインドの観点からお伝えします。
キーは、エフィカシーと抽象度です。ここでは営業マンのエフィカシーについて述べたいと思います。エフィカシーは「自己のゴール達成能力に対する自己評価」です。ゴールがエフィカシーの定義に含まれています。ゴールあってのエフィカシーです。とすると、まずは営業マン自身が実現したいと思えるゴールを複数設定する必要があります。これはできるだけ現状の外側(実現手段が分からないくらい遠く)のゴールです。営業として活躍してどんなことを実現したいのか、売上、報酬、お客さんに与える価値、業界を変えるくらいのインパクト、社内での自分の大きな存在感、業界での自分の存在感、その時のお客さんとの関係、などなど、できるだけスケール大きく自分の望みを描きます。そしてそのゴールを実現している自分が自分らしいと思って日々の営業活動に取り組みます。過去は関係ありません。自分を過小評価する必要もまったくなく、自分はでっかいゴールを実現して当たり前、というマインドをいかにつくれるかです。目の前のお客さんの課題なんて余裕で解決して、お客さんの会社自体を大きく変えて、お客さんの業界自体を変えて、より良くして、お客さんから尊敬され、お客さんからいつも相談を受けている、そんな自分が自分らしいのだと思ってやれば実際にそのようになります。それを実現するための情報が目につくようになり、自分自身の言動もそのように変わり、思い描いた通りにお客さんからも尊敬されるようになっていきます。決して自分を過小評価しないことです。必要以上に腰が低く、お客さんへの口癖が「申し訳ございません」という営業マンをたまに見かけます。きっと先輩の営業マンがそのようにやっていたのをみて育ってきたのでしょう。営業マンのイメージがそのようなイメージとして植え付けられています。そのような営業マンは自己イメージも低く持ってしまうため、本来秘めている高い可能性を十分に発揮できません。他には、しょっちゅうお客さんに怒られている営業マンもいます。お客さんから、納品物の品質が悪いとか、その割に価格が高いとか、怒られます。様々な要因により指摘をうけたり、時には、怒られることもあるかもしれませんが、それをコンフォートゾーンにしてはいけません。よく見ていると怒られる営業マンはいつも怒られています。これはお客さんと営業マンの間に、怒る人と怒られる人というコンフォートゾーンが築かれているためです。人の脳はコンフォートゾーンをクリエイティブに維持しますから、「自分はいつもお客さんに怒られている」というコンフォートゾーンがあると、ちゃんと怒られるような低いパフォーマンスしか出さなくなるのです。
では、どうしたらいいのか、エフィカシーを高く維持するのです。つまり、営業マン自身が望むゴールを思いっきり高く設定した上で、いかに自己評価を高くするか、これがベースとして重要なことになります。毎日ゴールを眺めてそれが実現している状態をイメージします。それが実現しているリハーサルを頭の中で行います。そして自己評価を高くして、お客さんと向き合います。すると徐々にお客さんとの関係は変わり、お客さんは営業マンのことを信頼するようになり、様々な課題を教えてくれるようになります。
次世代の営業マンに重要なこと、エフィカシーです。ですから、社長やマネジメントの皆さんは営業マンを育成する際に営業マンのエフィカシーを高めるような取り組みをしてみてはいかがでしょうか。