組織の空気(コンフォートゾーン)を変えることが成功のカギ
甲子園強豪校はなぜ強いのでしょうか。それは、自分達は甲子園強豪校であるとチームメンバーが言っているからです。チームメンバーだけではなく、監督、そして応援する人達も、ファンの人達も、みんなそのように言っているからです。そうすると、たまに予選落ちなんてしようものなら、選手たちの無意識は猛烈に「自分達らしくない」という反応がでて、すさまじい練習をして、甲子園強豪校らしく次は成果を出します。
マインドの使い方の観点で言うと、このチームには甲子園強豪校であるというコンフォートゾーンがあるために、それを創造的に維持するために高いパフォーマンスを発揮するということです。だから予選落ちしてしまうと、それはコンフォートゾーンの外ですから、元に戻そうとして練習をするわけです。
企業も同じです。その組織のパフォーマンスは何で決まるかというと、コンフォートゾーンの位置で決まります。コンフォートゾーンとは、空気のようなものです。組織の風土とか文化ということもあります。マネジメントの父、ピータードラッガーさんが「文化は戦略を食う」という言葉を残していますが、いくら立派な戦略をつくったとしても、文化、つまりコンフォートゾーンを変えなければ一向にパフォーマンスはあがらないということです。
逆にコンフォートゾーンを変えてしまえば一気にパフォーマンスが高く発揮されます。これは脳と心の仕組みなのですね。
では、どうやって組織の空気(コンフォートゾーン)をかえるのか。
それは、組織のゴールの臨場感を高める、ということです。組織のゴールとは組織の目指すものですが、この組織のゴールは、現状の外側(実現手段が分からないくらい遠くのゴール)である必要があります。そして、社員全員のゴールを包含するような大きなゴールです。具体的な年間目標のさらに上位のぶっ飛んだゴールです。(「組織のゴールはどうやって設定するのか」参照)
一方、ゴールの臨場感を高めるために何をしたらいいのか。最も重要なことは組織内で使われる「言葉のマネジメント」です。
私が企業に伺った際、経営者や社員の皆さんの話を聞けば、概ねその組織のパフォーマンスがわかります。例えば、経営者が「うちの社員は、言われたことしかやらない、現状維持の社員ばかりで、、」とか、社員は「うちの会社は新しいことは苦手で、古い体質の会社なんです」とか「日々忙しくて忙しくて新しいことやろうにも時間がありません」とか、そのような話はよく聞きます。そのような言葉の多い会社はその通りになっています。現実がそうだからそのように話していると思われるかもしれませんが、逆なのです、そのように言っているから社員たちはそのような現実を確信し、強化しているのです。
重要なことは、ゴールの臨場感を高める言葉です。人はどうしても過去の事、その中でもネガティブなことを言葉にしようとします。そしたらその言葉の通りになるのです。「私なんておっちょこちょいで、いざというときいつもミスして・・・」なんて言っているとそれがコンフォートゾーンになりますから、「おっちょこちょいな自分が自分らしい」という無意識ができあがり、いつもそのようなミスを起こすようになります。
組織の場合はさらに厄介で、ネガティブな言葉は一気に広がっていきます。人が使う言葉は誰かが言っている言葉によって形成されるという特徴もあります。上司が「これは無理でしょう、難しいよ」というと、その言葉は部下の脳内で響き、部下も同じような言葉を使うようになります。そうすると組織の多くのメンバーが「無理」「難しい」という言葉を使い、そのとおりのネガティブなコンフォートゾーンが出来上がってしまうわけです。そしてそれに見合ったパフォーマンスとなります。
だから、経営者もマネジメントも社員の皆さんも自分達に実現したいことがあるなら、その実現したいゴールを基準に言葉を使っていくことが大切になります。ゴールの臨場感が高まるような言葉を使いたいということです。「うちの社員は、言われたことしかやらない、現状維持の社員ばかりで、、」とか、「うちの会社は新しいことは苦手で、古い体質の会社なんです」とか、「日々忙しくて忙しくて新しいことやろうにも時間がありません」がゴールの世界ではないですよね。だから「うちの社員は素晴らしい」、「○○の工夫をすれば必ず時間はできる」、「もっと新しいことをやっていこう」、「新しいことをやって3年後には売り上げを大きく上げていこう」、「自分達ならできる」、「君ならできるよ」、「一歩前進したじゃん。すごいじゃん!」といったゴールの臨場感が高まる言葉を使っていきたいということです。こうした言葉が社内で横行し始めると、一気に会社の空気は変わります。そしたら一気にパフォーマンスが出てきます。嘘のようですが、成果を出すための一番の近道です。
私がある企業に入ってコーチングをしていった際、社員は上司や仕事に対する愚痴が多く、誰かのネガティブな側面ばかりに目が行っていた営業チームがありました。そこで、私がつくった仕組みの1つとして、毎週、部長も部員もごちゃまぜにしてペアをつくり、1日5分、相手の話を聞いて、相手の良いところをほめるというのをやりました。最初はみんな違和感がありましたが、徐々に慣れていきました。そしたら3か月できれいに空気が変わり、当初予定の売上の2倍を売り上げるチームが出て来ました。明らかに社員の普段使う言葉変わりました。そしてお互いの良いところを発見し、応援するようになりました。1人1人、超多忙で、プレッシャーがかかるような多少厳しい局面でも成果を出すようになりました。
組織の空気、つまりコンフォートゾーンを変えるためにやることは組織の構成員が使う言葉を変える、ということです。