1on1で上司が部下のゴールを引き出す際のマインドの使い方②(抽象度)

1on1で上司が部下のゴールを引き出す際のマインドの使い方②(抽象度)

1on1で確実に抑えておきたい考え方の1つに「抽象度」があります。抽象度というのは、情報量の大小をあらわす度合いのことですが、抽象度が高いというのは抽象的である。抽象度が低いのは具体的であるという意味でとらえることができます。たとえば、犬を1つ抽象度を上げると哺乳類、犬と同じ抽象度にはネコ、サル、ライオン、馬など哺乳類の仲間が並びます。犬から1つ抽象度を下げると、パグ、柴犬、チワワ、ドーベルマン、のように堅守が並びます、さらに1つ抽象度を下げると、ポチという名前のチワワのようになります。特徴として抽象度を1つ上げると含まれる情報量が一気に増えます。犬から哺乳類に一段抽象度があがるだけで、世界中のすべての哺乳類を含みます。

では、1on1でこれをどう使いこなすのか。例えばこんなシーンです。部下に「今後どうしていきたいですか」と質問してみた時、部下が「私は今やっているようなローエンドモデルの設計はあまり面白みを感じません、ハイエンドモデルの設計の仕事をしたいです」という答え。しかし上司からすると、今はコスト削減重視の社内状況があり、市場の状況からするとハイエンドモデルはやらせられないとなると、そこで矛盾が生じ、それ以上部下の望みをかなえてあげられないとなってしまいます。すると「そうか、でもな今は難しくて・・ごめん」となり、次から「どうしたいですか」と聞くことに対して腰が引けてしまうわけです。

こんなときどうするかです。「ハイエンドモデルの仕事をしたいです」と言われたときに、こう質問するのです「そうか、いいじゃないですか、ちなみにハイエンドモデルに取り組みたいのはなぜ?」と抽象度を1つ高める質問をします。すると「やはり更に自分の技術力を磨いてステップアップするには難しいモデルにチャレンジしたいのです」というとします。すると「なるほど、了解しました。今すぐに同じ機種でハイエンドモデルは社内の事情としてもやることができないが、ローエンドモデルの中でも、次のモデルでは新技術を取り入れていくプロジェクトチームが立ち上がる可能性があるので、それに参画してみないか」といってうまく本人の希望を実現する選択肢をみつけることができるのです。

ハイエンドモデルかローエンドモデルかという2者択一になると、いまの社内状況からすると、それはやらせてあげられないとなり、それ以上話は進みません。ですが、ハイエンドモデルをやりたいというゴールの1つ上の抽象度のゴールを探ると、ハイエンドモデルを手段として実現したい「自分の技術力を磨きたい」という話になり、その途端にとりうる選択肢が一気に広がります。例示したように、同じローエンドモデルの中でも技術力を磨けるような仕事を任せるとか、そもそもローエンドモデルでもハイエンドモデルでもなく、技術レベルの高い研究開発寄りの仕事を任せるなど、抽象度を上げた瞬間に、その下には多くの情報が広がるわけですね。犬とサルと言っているうちはいつも喧嘩して矛盾が生じるものの、ほ乳類と1つ抽象度があがった瞬間に、ほ乳類同士仲良くなりましょうとなります。一気に情報量が増えることで解決できる可能性が広がるのです。

こうして1on1におけるコミュニケーションで懐深く相手の話を受け入れることができます。会社にいると「具体的にどういうことか」と問われることも多く、1on1でもどうしても具体的な話になりがちですが、具体的にすること(抽象度を下げること)は大切ですが、逆に上げることは更に大切です。子供のころを思い出してください「将来何になりたいか」と聞かれるとちょっと窮屈なのですが、「将来どんな人になりたい」と言われると少し楽に答えられますよね。

抽象度を上げたり、下げたりするコミュニケーション、これを1on1では意識して多用しましょう。抽象度を上げたら、次は下げてみて具体的な話してみる。すると様々なアイディアが出やすくなります。先の例でいうと、「技術力を磨きたい」という話がでたら、そのための手段として今までは「ハイエンドモデルの設計」という手段だけでしたが、他にも広げて考えることができます。それを部下と一緒に考えていけばいいわけですね。

ぜひ、意識して使ってみてください。

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