1on1で上司が部下のゴールを引き出す際のマインドの使い方①(臨場感の共有)

1on1で上司が部下のゴールを引き出す際のマインドの使い方①(臨場感の共有)

上司と部下が1対1で月1回、30分程度ミーティングを行う1on1を取り入れている企業がこの3年くらいで増えています。その分、1on1がうまく機能しないという相談を受けることも増えています。本来は部下を成長させるコミュニケーションの技法と言われていますが、中々そうはうまくいっていないことが現実のようです。1on1をうまく機能させるためにもやはり、マインドの使い方をおさえて行う必要があります。

まず、よくあるのは、部長は人事部から1on1やりました?と催促されて、義務感で部下と向き合う。向き合ってみて、「君のやりたいことは何?」と聞くも、部下は難しい顔をして、いまいち話が盛り上がらない。逆に部下は、ズバズバやりたいことを述べるものの、上司からすると、それは今の会社の方針ではやらせてあげられないという本音があり、それ以上やりたいことを聞くことに腰が引けてしまう、なんてこともあるようです。

まず、1on1やコーチングの教科書によく書いてある部下の話を「傾聴」することは、とても大切なことです。が、相手の話を、しっかりうなずいてきくこと、話を最後まで聞くことなど表面上の話だけではなく、部下と向き合う「上司のマインドの使い方」が非常に重要になってきます。

傾聴における上司のマインドの使い方の本質は「臨場感の共有」です。臨場感の共有とはどういうことか。私のグループセッションでよくやるワークなのですが、2人1組になり話し手と聞き手に分かれます。話し手は最近食べた美味しかったものについて、臨場感高く聞き手に対して語っていただきます。例えば、近所に古くからある行列のできる焼き肉屋さんの話。そこの人気No.1の上カルビは、炭火でジュっと短時間焼いて、特製の甘いタレと特製のコチュジャンで口の中に入れた時、そのあま~い脂が口の中に広がります、で、その余韻冷めやらぬ中、キンキンに冷えた生ビールを流し込むんです、白ごはんも何杯もいけるんです・・・なんて話を1分間お話しいただきます。そして聞き手は、その話を、まったく無関心、無反応で話を聞いてもらいます。何なら別のことを考えながら、よそ見をして聞くわけです。当然ですが話し手は滅茶苦茶話しづらく、1分間がとても長く感じられ、人によっては途中で話をやめようとする人も出てきます。1分終了したら、次に、同じペアのまま、話し手には再度変わらず同じ話をしていただきます。今度は聞き手は、相手の話を「傾聴」しながら聴いてもらいます。相手の話をしっかりとうなずきながら聴いてもらいます。その際に、脳の中では臨場感を共有して聞いてもらいます。焼き肉を焼くときのジュワッという音を実際に聞いているくらい臨場感を高く想像し、脂の甘い味も実際に味わっているのと同じくらい想像して、話を聞きながらよだれが出てくるくらいの臨場感で話を聞いてもらいます。これが「臨場感の共有」です。人は言葉を起点に五感と感情で現実世界と同等の臨場感を感じることができます。これを意識的に行ってもらうわけです。すると話し手はもっと話をしたくなりますし、1分間が相当短いと感じます。一方聞き手も楽しくなってきてもっと話を聞きたいという感情になります。聞き手のマインドの使い方で大きく話し手のマインドも変わるわけです。

この臨場感を共有する中で、話し手と聞き手の間にうまれてくるのが「ラポール」です。ラポールは、コミュニケーションの土台となる信頼関係のことです。相手の話を聞きながら、相手の話の臨場感を同時に共有して感じながら聞くことで結果的に強い信頼関係が出来上がっていきます。1on1においては、部下の話を聞きながら、この臨場感の共有を行います。 

次のステップとして重要なことは、何の話に関して臨場感を共有するかです。答えは、「未来の話に臨場感を共有すること」です。部下の話の中には、過去の話、仕事に対する愚痴や人間関係に関することなど、ネガティブな話なども含まれます。それは一旦聞いて相手の感情を受け止めてあげることはとても大切なことです。が、どこまでもネガティブな話に臨場感を共有していくと、相手は想定上にネガティブな話をすることになります。ですから、あるタイミングで未来のことに目を向けるように促す質問をしたいわけです。たとえば「今後はどうしていきたいですか」のような質問です。するとそれだけで、未来に目線がいきます。そこからポツポツと部下が明日、明後日のような、ちょっと先の事であっても未来のことを話し始める。そして、その話の臨場感を更に共有していきます。

例えば、部下が今やっている仕事でもっと成果がでるようにしたい、という話をしたとします。そしたら、聞き手である部長が、その臨場感を高めるつもりで、「お、いいですね、成果とはどんな成果ですか」といった形で質問していきます。そして、ある程度臨場感が共有できて来たら、更にその先どうしたいかと更にその先の未来も聞いて臨場感を共有していきます。部長は部下の望みを徐々に聞きながら、自分自身の頭の中で一緒にワクワクしていきます。こうして未来のゴールの世界の臨場感を共有していくのです。すると、ラポールが形成されていき、さらに面白いのは、部長は部下をさらに応援したいという気持ちになっていきます。これがとても大切なことです。部下は「よしやるぞ」と思って1on1が終了し、また来月面談をすることが楽しみになります。

臨場感の共有、是非やってみてください。

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